彼女と別れて1年後の夏。ミステリー作家“M”(阿部寛)は、友人・大関の葬儀に参列していた。知り合った当時、彼はまだ下っ端のADで、非常階段に寝袋を敷いて生活をしていた。「10年後、俺たちどうなっているかな」とよく口にしていた彼はプロデューサーになっていた。エッセイの単行本化に向け準備を進めていたMだったが、ここにきて澤田が出版社を辞めると言い出す。エッセイはどうするのかと心配するMに、 澤田はエリート系現代っ子の後任・若林を紹介した。今まで関わりのなかったタイプの人間を前にして、戸惑いを隠せないM。若林とデザイナーたちに囲まれて打ち合わせをしていたMは、いつもと違う空気に馴染めず、外の喫煙所でタバコを吸っていた。おーい、とMを呼ぶ声がする。振り返ると、非常階段に寝袋が敷かれていた。ファスナーが開きひょっこり顔を出したのは、若かりし日の大関だった。